MSBS自主開催ミュージアム04
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 テキスト部門 No.004
 ししゃも思考からみちびかれるチーム理論 by RA0131F / リーン・C・レヴィン

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【31230:午前】

BR60も盛大な中で幕を閉じ、今年度のMSBS全日程は消化されており、
本部ロビーも普段の盛況とは打って変わって静かなものであった。
それに午前中に来ただけあってこのままなら誰か知り合いにあってしまう前に
引退手続きをして早々に立ち去れる・・と私は安堵していた。

それでも普段より控えの報道陣だけは多かった。
傭兵王 ドン・ハッカが年内に引退するであろうという情報が関わっているのだろうなとも思った。

「・・・撃墜23機・・・」

中央のオーロラビジョンには数日前のBR60の結果が映し出されては消えていっていた。

溜め息・・いやもはや感嘆の音しか出ないくらい圧倒的なものだった。
これから続く永い永いMSBS史の中でも一際輝いて語り継がれる存在であるのだろうな・・と。

「それにくらべて私は・・」
自分の最終戦の成績についても若干不満はあったが、
何より徹底的に練られた機体案を土壇場で僅かだけ自分なりに変えてしまったことが悔やまれた。
しかもことさらそれが敗因に繋がっているのだから悔しさは大きかった。


せめてもの救いは引導を渡してもらった相手が憧れの髭総帥だったことだろうか?
ただ有終の美にこだわったりすることも無く引退手続きを取りにこうしてやってくる
自分のこの部分だけは好きになれた。


「まぁ、考えててもしょうがないし手続きすませてこよっと。」


手続きは他に人もいなかったせいもあってスムーズに終わった。
事務のお姉さんと二言三言、他愛も無い会話を交わした後、残りの私宛の秘密通信を確認しにチームルームに寄ろうと考えた。

その際、何か記者風の人間に呼び止められた気がしたが、私はマイナーな人なので人違いだろうと考え無視した。
ちらっとホントに私じゃないのかな?とか期待したけどエスカレーターを逆走するのは恥ずかしいのでやめておいた。


もう年の瀬、明日は大晦日なだけあってチームルームにも当然誰もいなかった。
誰かいることを別に期待してたわけでもなかったので手早く自分宛のメールを開いてみた。

「・・・1件・・・グ・・グース=ハワードォォォ!?」
このおっかない整備兵からメールが来たことなんて今までただの一度も無かっただけに
私は驚きを隠せなかった。隠す必要も無かった。

「えーと、「手早く地下の駐車場まで来い。」って・・うわぁ・・・お礼参りって本当にあるんだぁ・・」

走馬灯の如く今まで自分がやってしまったことを思い返してみる。

「やっぱり、アレかなぁ。戦果の上がらないの承知で3回も飛行機乗ったことかなぁ・・、それともビームバズーカ実験したのとか、
 部下を大量にぶらさげて崩壊したのとか、壮大な作戦ミスしでかしたのもあったなぁ・・、
 駄目だこりゃ・・確実に殺られるわ・・。。」

思いつく限りろくなことをしてなかった。

「ダブル烈風拳とか喰らった日には家に帰れないから病院の手配だけはしておこう・・。
 お正月を我が家で過ごせないのはとても悲しいことだ・・がくっ。」

溜め息を大きく一度だけついたあと、私は覚悟を決めて地下駐車場直行エレベーターに乗り込んだ。
多分2分キルで経験値0をつけられるよりかは痛くないだろう。そう思いたかった。。




「・・・やっぱり今日は人が少ないかぁー」


まばらにしかエレカも止まってない一般用の地下駐車場を足早に通り過ぎ、MSBS関係者側へと向かう。
こちらも駐車スペースは閑散としたものだったが・・・

「うわぁ。・・一目で分かるのは確かにいいことだけどさぁ・・」

・・およそ優雅な暮らしに疎い自分でも分かる。 

「リムジンだよ・・」

思っていることが自然と口から漏れるくらい気圧されていた。
自分の前方に陣取っていた、漆黒の6ドア車両。
疑う余地も無く、これが怪物の乗る車であろうと考えた。。


おそらくそうだとは分かっていてもリムジンの助手席から降り立った黒服(私にはホッパーなのかリッパーなのか区別はつかない)が、
まるで君を出迎えるかのように最後列のドアを開けるのを見てしまうと、自分以外に誰もいないはずなのに思わず周囲を見回してしまう。

「リーン・C・レヴィン・・・正直に言って、私はお前がもう少し時間に正確な奴だと思っていたんだがな」

深紅のビロードを敷き詰めた車内には、長い選手生活中ついに一度も作業服姿を見ることがなかった私の整備員、
グース=ハワードが紫煙を薫らせつつ悠然とくつろいでいる。

「いや、時間指定とかされた覚えがそもそも・・」


私のぼやきなどまるで聞こえないかのようにこの男はもう一度口を開く。


「当たり外れもあったが、お前はほぼ私の思惑どおりの成績を上げてくれたからな。ささやかだが労いの席を用意してある。乗れ」


(お・・お礼参りじゃなかった・・・。)
一瞬だけ安堵したが即座にその考えは改められた。 
何せ今日これから一日中、拘束されるなどおよそ正気の人間の耐えられるものじゃない。
かといって断った場合、
ならば今ここで【回収】されるのも後々【回収】されるのも同じ。首は縦に振る選択しかなかった。

「あ・・ありがとうございます、失礼します。」


意を決して乗り込むと、ドアは閉じられ車は足早に地下駐車場をはなれた。


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【31230:午後】


運ばれてきた料理は、たぶんきっと庶民じゃ手が出せない、
チームメイトで言うならマサゾウ校長以外は食べたことの無いような高価な代物であることは容易に想像がついた。


関係ないが、マサゾウ校長より二倍も年を食ってるゴットの方はひょっこり大会に出ては試合後に若いチームメイトや整備兵を引き連れて
「食いちぎるぞ!」
を合言葉に繁華街へと消えていく元気な140歳台なのだが、
元気すぎていきなりぽっくり行くんじゃないかという不安もあった。まったくどうでもいい話だ。。



フォン・ブラウン出身とかいうルナリアンのシェフの料理はどれも美味しく
目の前で同席してる相手がかのグース=ハワードであることを忘れさせてくれるんじゃないかと思うくらいだった。

でもそんな期待は儚い。


「まったく・・貴様のような身分のものがこういった料理を口に出来ることを光栄に思うんだな。」


優雅にワイングラスを傾けながら、私の前に座る男は悠々と喋る。


「全く持ってグース様のおかげであります。感謝しております。」


「フンッ……口からでまかせをよく言えたものだ。」


事実まぁ、正装でなければ入れないようなこのレストラン。

もちろん入場の時に私はボーイが困った顔をして呼び止められたわけだが、
そのボーイも横を歩く男に気付くとすぐにもっと困った顔をして慌てて引き下がっていった。
だから半分位は感謝してるのは本当だった。


「いやいや、グース様の奢りじゃなきゃこんな料理口に出来るわけ無いじゃないですかー。まだ私18ですよ?」


「まぁそうだろうな・・。ここは私以外の人間は使えない特別な部屋だ。一度きりの待遇だからせいぜい楽しむがいい。」


「うへぇ・・超VIPルームだったか・・」


そんな大層な話を聞くと
この整備兵が一体どんな人間なのかますます分からなくなってきた。
そもそも100回を越える出撃に伴って機体をくみ上げてもらって整備するのに
ただの一度も私の機体を触っているのを見たことが無いし、
さっきも言ったように作業服を着ている姿を目撃した人間は皆無なのだ。


「しかし貴様のようなクズをわざわざ労ってやるなどと、この私も甘くなったものだ、考え改めねばならないかもな・・
 クックックッ・・・」


(・・・光栄に思うも何も自分で呼び出して誘っておいて・・・。)


何だか考えれば考えるほど理不尽な気がしてきた。


それに何もしないで食事をとるだけではこの男に なじられるだけなじられてちっとも面白くない・・。

もう私も引退したわけだし・・・
それにこういった場は労いの席だし無礼講だって昔聞いたことがある。

なら一歩も退かずに砕け散ってみようか?
私から話を振ったらどうなるのだろう・・?

考えが頭を巡ったが、どうにも踏ん切りがつかない。
仕方なく手始めにグースの前においてあったワイングラスをおもむろに掴み去り
中にまだ半分以上のこっていた赤い液体を飲み干してみた。

酔ってしまえば勝ちかもしれないとふんだ。


「貴様・・・何をしている・・・」

「飲んでみたかったから飲んでみたんだけど・・駄目?」

「フンッ・・。」

おもむろに飲んだワインに関してそれ以上のことは言わず
それどころか、グース様は意外にも次のワインと新しいグラスを2つ用意させてくれた。


しかし、次のワインが来るのを待たずに私は切り出した。
あまり飲みなれていない高級なアルコールを飲んだせいか気分まで酔いが早いようだ。


「質問ですグース様・・あなたは本当に・・・MSBSの整備兵をやってるんですか!?」

「・・・何が言いたい?」

「だってですね、整備兵って言うのはですね、リーグに所属するパイロットのなかで自分が担当する人間の機体を
 組んで整備したり。先行き不安なパイロットの相談に親身になって乗ってやったりするもんを私はイメージしてるんですよ。
 なのに、良く考えてみたらですね、私があなたと接触したのは過去たったの2回! 
 撃墜王取った時と大型ミサイルを大量発注した時! そのうえ自分の部屋に呼び付けたじゃないですかっ。
 およそ整備兵のイメージとかけ離れてますっ・・むしろ整備兵じゃなくて私たちの上司ですかあなたはっ!」

いっぺんにまくしたてた私と、ゆっくりと耳を傾けたグースは運ばれてきたワインに同じように口をつけた。

「・・・言いたいことはそれだけ・・か?」

鋭い眼光で私を見据えグースは言葉を続ける

「この私が、どこぞの中国娘や、腰の曲がった爺など同様に機械油にまみれて整備する
 ・・などという愚かな行為にふさわしいと貴様は思っているのか・・?」


「じゃあ機械油にまみれない整備兵がどこの世界にいるんですかっ!!」


「それは自信の感覚にとらわれすぎだ・・・整備兵に甘い幻想を抱くドブネズミっ・・。
 いいか・・考えても見ろ。私はID末尾2のパイロットを約140名かかえる整備主任だぞ?
 使えんクズどもの面倒を見て回れるほど私は暇な身分では無い。
 そういう草の根的な存在は一般整備兵の役目で十分だろう・・。」


言われてみればその通りだ。。1人で140人分の機体管理して平等に整備に奔走するのは体がいくつあっても足りない。
でも、パイロットとのコミュニケーションが皆無・・あってもアレじゃあ・・と思って、

「・・そういってパイロットをないがしろにして、愛ある指導が無いから・・
 あなたの担当のパイロットに・・エースが多く生まれないんではないんですか!!」


「ほぅ・・どういうことだ?」

私はポーチに入ったデータ端末を取り出し、いそいそと妖しいデータを引き出す。

「いいですか?(以下のデータは【31230】時点でなく【40507】時点のものを使用する)
 エース値2.01を超えたパイロットをエースと、2.50を越えたパイロットをスーパーエースとするとですね
 まず、スーパーエースの内訳は以下のようになってるんですよ!」

ID末尾 整備担当 性別 現役S-Ace 殿堂S-Ace 順位
1: サノバ・ボ・ズージャ B
2: グース=ハワード D
3: シャオ・リン 10 @
4: エリノア=スミス G
5: ブパン・ハッポンリット D
6: アハメド・ハーン B
7: ミシェール=ション A
8: モン・ケイ I
9: バレッタ・ガルシア G
0: カエラ=フィータール D


小計 41 31 72

「まずどうご覧になりますか・・グース様?」

「・・・別に少なくも多くも無いな・・、あの地味そうな中年男の部分が凹んでいる以外は誤差範囲だろう・・。
 それで・・このデータがどうした?」

「確かに・・少なくは無いですね。。でも機械油にまみれて健気に整備する中国娘のもとで一番大エースが
 生まれてたりするんですけどね。
 まぁそれはさておき、次に本題・・Ace2.01以上の人数、一般エースの人数を見てもらいましょうか・・ね?」


ID末尾 整備担当 性別 現役S-Ace 殿堂S-Ace 順位
1: サノバ・ボ・ズージャ 11 17 E
2: グース=ハワード 13 I
3: シャオ・リン 19 D
4: エリノア=スミス 13 20 C
5: ブパン・ハッポンリット 15 22 @
6: アハメド・ハーン 14 21 A
7: ミシェール=ション 14 21 A
8: モン・ケイ 15 17 E
9: バレッタ・ガルシア 14 H
0: カエラ=フィータール 10 17 E


小計 103 78 181

「さぁて・・、この顛末・・どう申し開きますか・・・偉そうな中年男の部分がたいそう凹んでますが?」


勢いのままにきっちりと正面の男を見据える。
しかしグースは何のことはないといった感じで言葉を返しだす。


「貴様は馬鹿か? それともこの私をあえて馬鹿にしているのか? 
 どちらにしても下らん。実に下らん。
 整備のさじ加減でエースになれるなどというその発想、反吐が出るな・・。
 
 そんな瑣末なことを引き合いに出して、この私に一体何を望んだのだ・・?
 貴様のような小娘でも分かってるだろう、エース出現に必要な最大要因を・・。」


やはりびくともしない・・か。
でも私は少しだけ安心した。この人は全くMSBSそのものに無関心・・
という最悪なものではなさそうだということが分かったからだ。

私も少しだけ間を置いて彼の問いに応える。


「エースになるための要因は・・3つの用件に絞られます・・。
 
 まず思考・・・、これは一般にMSBSにおける知識・理論を指しますが、各個人の趣向もまた大きなウェートを占めます。。
 これのあり方次第ではエースになる道が限りなく険しくなる場合も当然あります。。
 
 2番目は運。
 MSBS最大の難関事項であり、不可避のものでもあります。
 しかし、7割運、所詮運ゲーなどと言う輩もいますが、運は基本的に参加回数の増加に伴い平準化されますし
 この運の影響を極力取り除くものが努力とか・・です・・。
 
 最後の要素が現MSBSにおいて重要な要素であります。・・パイロットの所属するチームであります。
 個々のチームにおいてその所属パイロットに対する養成率は千差万別であります。

 参入時期というものもありますが、これを狙ってやってる人間は超少数だと思われるのでのぞきます・・」

 
「そうだ、チームだ。機械的に割り振られたIDで決定される我々との関係よりも、
 パイロットどもが能動的に選んだチームの方がはるかに影響の大きいことは容易に想像がつくだろう・・。」


「つきますよ・・そりゃあ、まがりなりとも・・どこぞの代表ですし。」


グースは続ける、

「パイロットの思考もチームに影響される場合が多いな。およそチーム全体の動向を探るのなら
 部下に、中心人物数名の思考を調べさせれば済むことだ。
 中央の付近に使えんクズがいるチームなど悲惨だろうな・・興味などないが。
 あえて・・例えば・・」


「わーっ!!!例えば・・はいいですっ!! 例えはいらないぃぃぃぃ!!」


慌てて私は話をさえぎった。・・・この先を喋ってもらっても困る。 
君子危うき近寄らず、危ない話に首突っ込まず・・だ。


「なんだと・・? ・・まぁいいだろう。私もそんな話など毛頭したくない・・。
 いずれにせよ、我々整備の大半は、注文通りに最大性能を引き出すべく
 機体を構築するだけだ・・その注文がどのようなものであってもドライかつ迅速に仕上げる・・。それが重要なことだ。
 
 だから、我々の誰が整備をしようともエースが生まれることに何ら因果性は存在しない。
 さっきも言ったようにチームが根幹となる。
 特に、我々整備兵と担当パイロットの間に割って入るチームの機体アドバイザーと編成担当官・・この2タイプだ。

 ここで重要なのは、チームに影響を与えるのは最も優秀なアドバイザーではなく、最も熱心な奴だということだ。
 まぁ基本的にはこの二つは一致するから安心だが・・一致して無い場合は歪む。
 
 同時に編成官もまた、重要なキーになる。代表の右腕として遺憾なくその才を発揮させてやらねばならない。
 このリーグに優秀な参謀は数えるほどしかいないからな。」


「優秀な参謀とか優秀なアドバイザーの見分け方は・・?」


「優秀かどうかは戦場が判断したはずだ・・誰の出る幕でもない。」
 

「じゃあじゃあ・・とりあえずイナゴを持ってけ!って勧めた場合は戦場で随分結果も出てるし優秀なアドバイザーだったんでしょうか?」
   

「フッ・・とりあえず175mmライフル程度の甘い考えで、勝ち続けられたのなら・・な。
 だが既に175mmライフルはこのαリーグに蔓延しきっているぞ・・毎週、全体で3桁を越える発注があるんだからな。」
 
 もともと導入しようと思えばどんなずぶの新人でも搭載できるんだ。これを嫌う思考がなければ・・当然使用しているだろう。
 だから175mmライフルを搭載していることは絶対的なアドバンテージにはならん。 なるのは近接戦しか視野に無い
 ノンエース格闘家か、175を積まない思考・・もしくは積む思考がない相手だけだ。」


「イナゴだけでは必ず勝つことはない・・と。」


「そうだ、この画一的なパターンに次々と優秀な戦略を積まなければ勝てないだろうな。
 現在の流れから見て、175mmライフルだけでなくこれに必須策敵が標準化されるはずだ。
 そうすると来年、数大会後には、推力+武装+策敵 を備えた機体がさらに増える。」


ここまで話してグース様は一息つき、ワインで渇いた喉を潤した後、最後に一言だけ発した。


「もう食事も全て運ばれてきたな・・、残念ながら私は忙しいから、貴様をこれ以上かまってやることも出来ないな・・
 仕方ない・・ここから先は貴様自信で考えろ・・。チーム全体にもエース発生についても当然結びつく話だ。
 お前が答えを見つけたかどうかもまた結果が判断するだろう。 
 ・・まぁ折角だからせいぜい楽しみにはさせて貰うとする・・。それでは今日はここでお別れだ。」
 

そう言ってグース様は席をたった。慌てて私もワインをきっちりあけて後に続いた。 

一応、腑に落ちない点も多かったが、グース様はMSBSのことを彼なりに考えていてくれるらしい。
ゴミだのクズだの使えんだのと色々言ってる割に、
こうして引退したらすぐさま労いの席を用意してくれてるあたりも素敵だと思った。

顔に似合わず案外マメなのかもしれないな・・そう思うとすこしおかしかった。



とにもかくにも、こうして労いの席は幕を閉じた。・・・労われた気がまるでしなかったのは気のせいだ。


そしてその日。これ以降何があったのかは良く覚えていない。
緊張が抜けて開放されたのをいいことにチームメイトを呼び出し泥酔したから・・。



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【40622】


リーン「と、まぁこんなことがあったのを今思い出したんだよおねえちゃん。」


マリー「半年振りに思い出すか普通・・、で、ここがそのレストランだと。」


リーン「そうそう。そりゃあ今食べてるランチタイムコースとは違って、VIPで予約でスゥイートな食事だったけどね。」


マリー「ほぅ・・生意気だな・・。
    ならそんな洒落た小娘は要らんわ。帰れ帰れー。」


リーン「あー、すいません奢りなのに出過ぎた発言でありましたっ。で、聞きたいのはグース様の最後の発言の続きです代表。」


マリー「思い出しついでに私に聞くな・・アンタの知り合いに詳しそうな人間いくらでもいるでしょ・・。」


リーン「だって今思い出したし・・お腹一杯になったら忘れるかもしれないし・・ね?」


マリー「はいはい・・。合ってるかどうかは知らないけど・・適当に考えていってみますよ。

    今年に入ってから・・つまり私が参入した後の動き・・
    まず個人レベルだったら・・確かに今年に入って、埼玉流剣術もある程度広まったことも合わせて
    175mmライフルはますます浸透してたみたいね。 
    もうクラス戦の黒ドム175持ちは特定を諦めたくなるほどの多さ。
    天候に合わせて策敵改造も綿密に調整されてるし・・格闘家策敵諦め天候とかは除外だけどね。」


リーン「ふむふむ、グース様の言ってた通りか。それでそれで?」


マリー「個人で大分蔓延してるから同じような機体に毎週やられたりする気分もするだろうし・・特にドムに175ね。
    みんな同じような機体だと、戦闘になった場合
    中のパイロット次第ってのとか運とか行動順とか一戦ごとに対策できない部分が効いてきちゃって
    なんだか負けが込んでる気がしたりする。・・・でもこれはあくまで個人のレベル。    

    じゃあこれをチームレベルに直して考えてみると・・
    どうなるかっていうのは・・   
    例えばイナゴをとりあえず積むだけでもね、天候その他諸々条件あるけど、全員が標準搭載してたら嫌でしょ?」


リーン「いやだねぇ。中堅泣かせだろうねぇ。チェンマイ連打とかも厳しい。」


マリー「じゃあ、この全員標準搭載。どこのチームでも出来るか?っていうと実に難しい。
    あ、無論MBCは175mmライフルの上位武装だから放置ね。
    つまり、個人レベルじゃあイナゴなんて蔓延してるけど、これをきっちり並べれるっていうのはまだアドバンテージになる。
    
そこでチーム全体で何か他のチームには真似できない強みを持ってたら差がでるっていうことについて考えてみようか?

    作戦周りを統一しきるってのはまず初歩的なことに思えるけどこれは十分に重要なこと。
    部下は適当。指揮官は応援要請には応えよう!って言ってるよりは・・」


リーン「無視別敵作戦をきっちり理解して統制するのは遥かに強みがある・・と。」


マリー「そうそう。より大きな強みってのは他チームにはなかなか真似できないこと。
    まぁ、上の作戦が取れるチームはもはや・・全員が名参謀級の考え方持ってて出来る作戦だからね・・
    
    そこまでいかずとも・・きちっと作戦を指定してって行くだけでも大分違う。    
 
    他には・・少し、極端な・・というかあまり適切じゃない例な気もするんだけど 
    チーム全員がメガパイロット級・・もしくはそれ以上っていうのは、すさまじいアドバンテージで
    一朝一夕に真似できるものじゃないしね。 ていうかコレだけで他が適当でもごり押しできるかな・・

    探せばそういうのはいくらでもあるでしょう。
    上げるのが面倒だし、どこのチームを指すか一目瞭然になってくるから続けないけど・・」


リーン「うちのししゃもも個人レベルでは浸透してたけどチームこぞって使うところは結局出なかったね。。」


マリー「個人では蔓延したけど、やっぱりチームの射撃型全員が抵抗無く積めるか?っていうと、そんなのは中々起きない。
    こういうのは・・うん、言ってみればチームカラー。
    カラーでもいいし、みんなで目指す明確な目標でもいい。チーム一丸で何かの機体に思い入れがあるのも素敵。
    そういうのがあるチームは自然とこの先・・勢力が出るだろうねぇ って私は一応考えるよ。
 

    でもチームカラーがあるだけでいいか?っていうとまだまだ・・MSBSは甘くない。
    このチームカラーを活かせる状態にあるかどうか?が次の話だと思う。」


リーン「うーんと・・チーム編成?」


マリー「そう、編成。編成がある程度機能するような機体構築を各パイロットが実行できてるかどうか?
    と、行動順とか船頭指数とか編成の大枠自体に足枷となる材料は無いか?
    これをセッティングできる参謀は心強いね。もちろんうちにも欲しい。 
    
    でも今は、パイロットの半数以上を格闘家が占めてたら・・編成なんてどう機能させればいいんだか・・
    私はさっぱり思いつかない・・。

    他にも編成を活かせるよう、重要位置には優秀な人材を使えるかどうかってのもかなり大きいね。
    これらのあるなしもまた重要。とかく落ちない指揮官は素敵よ。チームの柱になるエース。
    このレベルまでいくと格闘型でも射撃型でも大差なくなってくる
    ・・でもこのレベルの格闘型が何人残ってるか?って言ったら悲しいことになるけど。
    
    いない場合も多いけど、それはそれで、多く指揮経験を積むチャンスが回るって意味で良いことでもある。」


リーン「信頼できる部下。頼れる上司。働き甲斐のある職場・・いいねぇ。理想郷・・。」


マリー「まぁ、優秀な参謀がいてくれると嬉しい。外から呼んで来るか、中で養成するか・・
    うちもこれは課題だったりする。。」


リーン「ふむふむ、・・これで全部かな?」


マリー「大体全部・・ね。 
    参加時期とかは抜いて考えることにしておきましょう・・
    あれは・・普通の人間は参加してから知る事実だから・・・どうしようもない。    

    でも忘れちゃ駄目なのは、全体を弄るより前に
    個人の趣向を尊重すること。これを無視してまで目指していいものなんて何も無いわ。」


リーン「ごもっとも。自由は絶対前提・・だよね。」


マリー「で、ここで個人レベルに戻って、チームとしての環境が整ってエースを輩出する母体が整っている中で
    さらに確実に抜け駆けするには、スタンダードな機体・作戦に+αをくっつけろ!っていう話だと思う。
    −αになるリスクもあるけどね。」


リーン「+αねぇ・・、新人ならAクラス回避・・とかかなぁ。物陰+超高策敵や無理してBランス積むのも強いかな。」

マリー「うーん・・そこから先は個性を存分に出す部分だから、千差万別よ。
    リーンならししゃも。私は誘い策敵+重装改かね。」



リーン「ふぅむ。じゃあさ、新バージョンが導入されるわけだけど、今後の展開は?」


マリー「まず、スタンダードになるだろう、有効な素体とその基本構築を見極めるの。なるべく早くね。
    とはいっても、盛んな交流ルームに行って話を聞けばささっと分かるでしょうけど。
    今、活発に情報交換行われてる茶室は4つ・・前後。 そこのどれかにいれば自然と情報は入ってくるはず。 

    で、そこからチームに帰って、スタンダード構築を各パイロットの趣向に背かない程度に指導して、
    あとは個性任せ。チームカラーはじっくり検討しつつ・・。
    最後に全員が出した個性を把握して編成・・かなぁ。

    それを何回かやって洗練させていけば、2〜3ヶ月である程度なりのやり方は決まってるはずさね。」


リーン「なるほどなるほど。ご高説・料理・・どちらもごちそうさまでした。」

マリー「いえいえ、どういたしまして。こんな嘘臭い話聞いていただいて光栄ですわ、初代代表殿。」

リーン「あははー。それじゃあお店出ましょうかー。」
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マリー「領収書の宛名は・・F2FFC様で。 代表職は楽しいなっ・・と」    
    



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【40623】


「OK、アミーゴ。面白い話聞かせてくれてアリガトよ!」

「いえいえ、整備しながら暇つぶしに話すのも悪くは無いでしょー?」

翌日、引退者も機体を組んでくれるというサービスもあることだし、私はひさびさに格納庫に入った。
引退者のIDは私の前のIDと末尾が違い、こうして新しい整備兵・・とは言っても
彼・・サノバ・ボ・ズージャはあの例外と違って、格納庫で機体を整備する人だから
整備担当ではなくても何度か話をしたことも面識もあった。


「ということはよぅ、あの野郎とユーのお姉ちゃんの話をつなげるとよ、
 エースってのは、チームに自分の知識を掛けて、個性をおっ足すかさっぴいたものの大きさがそれになれる可能性ってことなのかぃ?」
 

「さぁ・・?私にも分からないよ。私はこれから育つ新しいチームメイトをそうなるように見守るだけだね・・。」


「そうかぃ? まぁ俺もびしっと組んだMSがハッピーな活躍をしてくれるのは最高だな。
 ・・・っと出来たぜ!? ユーのパートナーだっ。 どうだい?俺の素敵な整備でバシッと決まってるだろー?
 コレでパーフェクトに仕事終わりだなっ。」


「えっと・・」


組みあがった機体を見上げて考えた。相変わらず無難な機体。。

聞いた話ではこれから先、挑戦システムが実装されて、現役パイロットと戦闘するみたいだ。。
そうなった時、私に挑戦する人は私の歩んできた道に何かを感じてに挑戦してくれるのだろう・・

私はその期待に当然応えなければならない・・・・

その時の機体はこれでいいのか?これが私らしさを表してるのか・・?
・・・いや、違う。足りていない。
出し惜しみは良くない。
そう決めた瞬間私は大きな声で言った。


「ごめん!!盾を外してししゃもをもう1本追加して〜!!」



私 の M S B S も ま だ 終 わ ら な い 。              to be continued・・・





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▽▼▽あとがき▽▼▽

はじめてこういうもの書いたし。
一貫性の無さが素敵。・・・


■関係ない補足
@
ゴットは4月下旬に天に召されました(12週連続放置による登録抹消)
20322より参入して、わずか51回の参加でした(皆勤だと100回〜になる)
MSBSαリーグマイペース王を個人的に贈りたい(ぇ

A
エースの人数はぱぱっと数えただけなので間違いがありそうです。

B
いきなりダイアログ形式に変わったのは自分でも分かりません。魔がさs・・(ry

C
倉庫のほうでやらせてもらっているチームネタですが、
現在アンケート回答は40通(130チームくらいには出した)であります。
先走りでグラフのほうは80〜ほど作ってあります。

裏を返すと、後40チーム先読みで回答くれないかなぁと思っている次第です(笑

D
再三再四までは言ってませんが、一番大事なのは【自分が楽めているか?】につきます。
で、個人的に代表・参謀の仕事は、楽しんでるチーム員に戦果を付加するのが仕事だと思っています。
必ず半分以上が負けて涙を飲む仕様なので、
どうせなら・・自分に近い人から、勝ってくれると嬉しいなぁ・・という程度です。

ちなみに自分に一番近い人間は自分です(黒

E


■没項目

マリー「・・・いや、リーン。料理はごちそうするけど。 ちょっと待ちなさい。 
    アンタ、私をだまくらかしたまま食事が終われると本当に思ってるわけ?」
リーン「ん・・なっ・・何のことかな?」
マリー「目が泳いで、半笑い・・ 駄目すぎだね・・」
リーン「いやいや・・だまくらかすなんて人聞きの悪い・・私は全くのシロだよ?」
マリー「・・・まずね、半年振りに思い出したって所から嘘でしょ?
    引退してから半年間、やたら積極的にチームルームをかぎ回って、交流ルームに出没して・・
    ここ一ヶ月に至っては、なにやら全チームの代表に質問状を送ってたみたいね。
    アンタはグース様の質問の答えが気になって自分で調べてる。
    そして、私よりずっとこれに詳しい・・違うの?」
リーン「うーん・・。やっぱりばれちゃうかぁ。あんまり隠蔽して活動して無いから当然なんだけどね。。   
    確かに色々とチームに関して調べてるよー。・・いろいろ・・とね。 
    それもこれも大会に出れないから暇なんだよね。殿堂の人たちはみんな何してるんだろうかと。」
マリー「はいはい。じゃあ今度はリーンが喋る番ってことになるね。
    手抜きは無しだぞ〜っと。 それではご高説お願いします。」
リーン「うーん、、じゃあまずチームカラーの話に戻って・・今バージョンの上位20%くらいのチームに大きく共通する点は
    @構成面子が精鋭である A(新人+メガパイロット)比率が高い B優秀な編成担当官がいる 
    C優秀な機体アドバイザーが熱心に動いている。 D世間一般で言われる優秀な武器の使用比率が高い。     
    これのうち2〜3個以上もってる気がする・・。それで、さらに何か+αがあったり・・。」
マリー「・・それで?」    
リーン「じゃあひとつひとつのチームに何があるか?って言われるといちいち上げていくのは面倒だし
    そんなのは自分で調べてよ〜としか言えないんだけど・・。

以下ネタがどうしても捻れず断念。 というかこの方向は厳しい匂いがした。  


■一言・・
もっとチーム史に関する話を前面に押し出すべきだったのかもしれない・・反省。 


 詳細

【作品名】 ししゃも思考からみちびかれるチーム理論

【作 者】 RA0131F / リーン・C・レヴィン

【サイズ】 31323bytes

【コメント】
どうも、シシャモの人です。
ししゃも思考とは当れば大きいが往々にして外すと・・(ry


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